2018年2月24日土曜日

【農家の年金】「農業者年金」と「個人型確定拠出年金(iDeCo)」はどちらを選ぶべきか

悩ましき自営業者の老後問題。

もちろん、個人的には畑で前のめりに倒れるつもりではありますが(これはこれで迷惑)、人生何がどうなるかわかりません。私は現在30代前半ですが、やっぱり今のうちからしっかり考えて、実践していくことが重要です。

法人化していない(厚生年金がない)農家の場合、一階建て部分の国民年金に加え、二階建て部分にあたる「農業者年金」という農業者を対象とした独自の年金制度があります。

農業者年金の特徴は以下の通り。

1. 農業者が広く加入できる
2. 積立方式・確定拠出型の年金
3. 保険料を自由に決めることができる
4. 終身年金(80歳前に亡くなった場合は死亡一時金あり)
5. 積み立て、運用、受け取り時の税制優遇
6. 保険料の国庫補助がある
(参照:農業者年金の特徴とメリット・よくある質問|農業者年金の紹介

ただし、この農業者年金に加入した場合は個人型確定拠出年金(以下iDeCo)への加入ができなくなくなります。(国民年金基金もできなくなります)

つまり、

一階部分(全員):「国民年金」
二階部分(任意):「農業者年金」 or 「iDeCo」(+「国民年金基金」)

ということですね。


▼ 農業者年金に加入すべきか、iDeCoへ加入すべきか


では本題の、農業者年金に加入すべきか、iDeCoへ加入すべきかという問題です。

上述のとおり、農業者年金は積立方式・確定拠出型という形を取りながらも、終身受給の年金になります。また、もしも80歳前に亡くなった場合は死亡一時金が支払われます。

自分が何歳まで生きるかを予測することは誰にもできません。結果として、80歳前に死亡する方もいれば、80歳を超えて長生きする方もいます。死亡一時金において死亡した翌月から80歳到達月までと年齢を区切っているのは、80歳を超えてから受給するであろう部分は、結果として長寿の方々の長生きリスクをそうでない方々が負担する保険の形により、長生きしても年金を終身受給できるようにしていることによります。
(参照:終身年金(80歳前に亡くなった場合は死亡一時金が遺族へ)|農業者年金の概要

また、一定以上の運用益が出た際に危険準備金として積み立てを行い、65歳の年金裁定(月々の年金額決定)時に自らの年金原資が支払った保険料を下回っている場合には補填されます。つまり、元本割れしないということですね。

加えて、保険料の支払い時には一定の条件を満たすことで国庫補助があります。20歳から最大限補助を受けた場合には216万円になります。けっこうな額ですね。

この国庫補助分については、特例付加年金となり「保険料納付済等期間が20年以上」及び「農業経営から引退(経営継承等)する」という2つの要件を満たすことで受給ができます。
(参照:保険料の国庫補助|農業者年金の概要

こうした非常に魅力的な制度となっている農業者年金ですが、リスクの少ない国内債券を中心に運用を行っているため平成28年までの平均年利回りは2.77%となっています。


一方、iDeCoに加入した場合です。iDeCoは名前の通り確定拠出の年金で、掛け金の設定が自由、積み立て、運用、受け取り時にそれぞれ税制優遇を受けることができます。これらの点は基本的に農業者年金と同じですね。ただし当然のことながら、国庫補助のようなものはありません。

またiDeCoでは、運用する商品を自ら選択する必要があります。商品には国内外の株式、債券、不動産などの投資信託、元本保証型の生命保険や定期預金など様々なものがあります。

そのため、選んだ商品の運用成績次第では支払った掛け金よりもマイナスになる可能性もあります。ただ、適切な商品を長期間運用することにより元本割れリスクは軽減することができます。

例えば、SBI証券においてiDeCoに採用されているインデックスファンドのうち積立件数が一番多い「DCニッセイ外国株式インデックス」を見てみます。

当該インデックスファンドがベンチマークとしている「MSCI コクサイ・インデックス(円)」のここ20年の年平均リターンは6.2%です。リーマンショックを含む期間であってもマイナスにはなっていません。しかし、単年で見るとマイナスになっている年もあります。いかに長く運用期間を確保できるかが重要になりますね。
(参照:MSCI コクサイ・インデックス (KOKUSAI) (円)|わたしのインデックス


では、2.77%と6.2%という利回りの違いがどの程度の金額と違いになるか試算してみます。私を例に運用期間を25年。利回りはそれぞれざっくり2.5%と5%ということにします。(利息、元利合計については1万円以下の単位を切り捨てています)

・月額2万円/運用期間25年
<年利回り2.5%>
元金:600万円/利息:230万円円
元利合計:830万円円

<年利回り5%>
元金:600万円/利息:580万円
元利合計:1,180万円

350万円差。


・月額5万円を拠出/運用期間25年
<年利回り2.5%>
元金:1,500万円/利息:580万円
元利合計:2,080万円

<年利回り5%>
元金:1,500万円/利息:1,460万円
元利合計:2,960万円

880万円差。

それなりの金額の差になりますね。ただし、繰り返しになりますが農業者年金の場合は国庫補助と終身受給というめでたく長生きした時の保険的な性質があります。

一方でiDeCoでは年金として毎月受給する方法のほか、一時金としての受け取りも可能で、その際には退職所得控除が適用されます。農家の場合、退職金はありませんので有利に一時金として受け取ることができます。退職所得控除の金額は加入期間によって決まるので、少額からでもなるべく早く始めた方が枠は大きくなります。一時金として受け取りその後も自ら運用することができればさらに差が出ます。


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・追記

掛け金拠出時の控除に関して触れていませんでした。

iDeCoが小規模共済等掛金控除なのに対し、農業者年金は社会保険料控除となります。

小規模共済等掛金控除の対象が本人だけなのに対し、社会保険料控除であれば同一生計の配偶者や親族分をまとめて控除できます。

夫婦で農業を営んでいる場合など、所得によっては有利になるケースが多そうです。
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ということで、(一応の)結論です。

いろいろ書いてきましたが、シンプルに自ら商品を選択して運用したいのであれば「iDeCo」そうでなければ「農業者年金」がよいでのではないかと思います。

私は自分で商品選びをしたかったためiDeCoに加入しました。

運用商品の選択が負担になる人、こんな事を考えている時間があったら農業や他の事を考えたいという人もいるでしょう。

また、控除により明らかに農業者年金が有利というケースもあり得ますから、そこは冷静な判断が必要です。

意識するかしないかに関わらず最終的には「投資」ですので何がどうなるかなんてわかりません。不確実な未来に対して、どう舵を切っていくか。こうした選択は考えるよい機会になりますね。


※間違いのないように気をつけて書いていますが、認識ミス等あるかもしれません。ご興味のある方はご自身でよく調べてください。


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