2021年12月5日日曜日

「新たな農業経営指標」による経営状況の自己チェック

今年の始めに「農業経営における財務指標を確認してみる。」ということを書いたのですが、1年経って改めて経営状況の自己チェックをしてみようと思います。


財務指標の確認にあたっては簡易計算用のスプレッドシートを作成していますのでご活用ください。ちゃんとしたものは農林水産省のページにあります。



「農地」及び「財務」シート内の表に値を入力しますと(表内の白背景のセル)、「指標による評価結果」シートに結果が表示されます。

PCでGoogleアカウントにログインした状態で、リンク先にて「ファイル」から「コピーを作成」で編集可能なファイルが作成されます。エクセルで使いたい方はファイル作成後にMicrosoft Excel(.xlsx)形式でダウンロードすれば使えると思います。


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私は、両親が兼業でやっていた農業を引き継いぐ形で就農したのですが、まずは「既存農地」「家族の労働力」「自己資金」の範囲内でできることをやり尽くすと決めて始めました。

それを今も継続しているのですが(まだやり尽くしていない)、指標と見比べた時にどうなのかということですね。


【財務指標】

・売上高借入金比率
計算式:借入金/収入 計
望ましい水準:0~100%

・生産単位当たり借入金
計算式:借入金/耕作している農地面積 合計
望ましい水準:0~130 千円/10a

借入金に関する指標を2つとも満たすには、10a当たりの売上高が13万円より多いのか、少ないのかにより、どちらの望ましい水準の上限がキャップになるかを把握する必要があります。

多ければ「生産単位当たり借入金」の上限が、少なければ「売上高借入金比率」の上限がキャップになります。

うちの場合は、「生産単位当たり借入金」の上限がキャップになっています。耕地面積は約2haですので、借入金の上限は260万円ということになります。現状借り入れはありませんが、経営の規模感として目安になりますね。


・生産単位当たり農業用固定資産額
計算式:減価償却資産/耕作している農地面積 合計
望ましい水準:0~130 千円/10a

こちらも、2haで上限が260万円ですね。

うちのような小さな農園でも取得価格を積算すると2千万円近くの規模になっています(こわい……)。過剰投資を避けるためにも、逐次確認しておきたい数字です。

農業は、生産設備への投資額が大きくなりがちです。持続可能な経営のためには、損耗して存在が消滅するするまで設備を使い切れるかどうかが肝な気がします。

一方で、投資をしないことで作業効率の低下を招いてもいけませんので、そこの見極めですね。

最先端の設備を取り揃えた農業が意外とうまくいかなかったりするのは、やはりこの辺のバランスが難しいのかなと思っています(適当)。


・自己資本比率 or 自己資本比率(除く土地)
計算式:資本/資産 計 or (資本 - 土地)/(資産 計 - 土地)
望ましい水準:30~100%

小規模家族農業としては、基本的に100%を目指したいですね。


・売上高現預金比率
計算式:現預金/収入 計
望ましい水準:20~200%

うちの場合、年間で必要な運転資金を考えれば、20〜50%程度あれば十分安定的な経営ができるように思います。いざという時の備えとしては収入保険に加入していますしね。

一方で課題として感じているのが、売上高現預金比率が50%超えるような状態になり、資金的な余裕ができた時に過剰投資を避けつつどのように活用するかです。一定の経営規模を維持したい場合、なかなか難しいなと……。

まぁ、今のところ余計な心配ですけども。兼業化とも関わってくるところですね。


【技術指標】

・農業所得率
計算式:農業所得/収入 計
標準的な水準:38%
上位20%の水準:48%

生産コストと販売価格のコントロールが難しい農業において持続可能な経営を目指すのであれば、頑張らなければならない指標です。

とは言え、48%は未知の世界ですね……。調べていませんが、品目的な偏りもあるかもですね。


経営改善にお薦めの本です。


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ということで、経営状況の自己チェックでした。今回ざっくりとでしたが、いろいろな経営モデルをじっくり分析したらおもしろそうですね。

定期的に実施していきたいです。


黒猫きくらげ


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